2005(平成17)年に発行された『シリーズ教育直語2 「君が代」の履歴書』(川口和也著、批評社)の「第8章 文部省と「君が代」」に「明治二六(一八九三)年八月一二日、「小学校祝日大祭日歌詞並楽譜」で次の八曲が決定され、官報に載りました」とあり、そこに 「君が代(海軍版)」がある。この「生き残った海軍版「君が代」が私たちの知っている「君が代」です」とある。2010(平成22)年発行の『国歌斉唱♪ 「君が代」と世界の国歌はどう違う?』(新保信長著、河出書房新社)は「世界の国歌を通して「君が代」を見直すこと」を「目的」としている。そこでいろい ろな国の国歌が紹介されているのだが、同書はその訳詞を洋楽のそれのようにとっつきやすく「やわらかめの日本語に訳し」ているのが特徴だ。さらに著者は日 本に住んでいておもに外国語学校や各国料理店で働く外国の方にそれぞれの国歌の歌われ方について話を聞いている。ただし「各国出身者一人に話を聞いただ け」なので、『君が代』についてはニュースになった学校でのさまざまなできごとや新聞の投書を多数引っぱりだしているのにくらべて、見直すために十分な情 報を得ているとはいいがたいような気がする。よって試みとしてはおもしろいのだが、著者も「自分の頭で考えることが大事なのだ」としており、説得力を持つ ような結論を見いだせないまま終わってしまっている。