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今日のコラム

9月14日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)

いつくしむ

 昔、仁統大皇は、国中に炊事のけむりの乏しいのを見て人民の困窮を知り、三年間課役を中止し、三年後国中にけむりが満ちてはじめて、「民富めり」と再び租税を課された。

その間は皇居も荒れ、雨がもるほどであっても修理されなかったという。これは伝説かもしれないが、しかし大事なことは、そのように人民をいつくしむ仁慈の心を持つことが、昔からの指導者のあるべき姿とされてきたことである。

そこに日本の一つのよき伝統があり、そういうところから封建時代でさえ数々の名君が生まれたのであろう。そのことが栄えるもとだったのである。民主主義の今日でも、指導者はまず人びとの幸せを願う仁慈の心を持たねばならないと思う。



筆洗

2013年9月13日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
 
▼♪あかいめだまの さそり ひろげた鷲(わし)の つばさ…オリオンは高く うたひ つゆとしもとを おとす…。宮沢賢治がつくった「星めぐりの歌」だ

▼神話では、サソリに刺されて死んだために、今でも夜空で「あかいめだま」のさそり座から逃げ続けているとされる狩人オリオン座。こん棒を高く振り上げた姿の、その右肩にある星が、ベテルギウスだ

▼ この赤く輝く星は、死を迎えつつあるという。何しろ太陽の一千倍もの直径を持つ超大物だ。最期の時は、すさまじい爆発を起こす。サイエンスライター・野本 陽代(はるよ)さんの『ベテルギウスの超新星爆発』(幻冬舎)によれば、その明るさは満月の百倍にもなって、たとえ昼間でも輝いて見える。神話の世界のよ うな光景だろう

▼この星がある波長域では従来より二~三倍も大きく広がって見えることが、兵庫県立大学西はりま天文台での観測で分かったという。いよいよその時かと思ったが、専門家は「なぜこんな変化が起きているかは不明だが、爆発の前兆とは言えないだろう」と冷静だ

▼ベテルギウスは爆発が観測されてから三カ月ほど煌々(こうこう)と輝き続けてから少しずつ暗くなり、やがて肉眼では見えなくなるという。オリオンはたくましい肩を失って、冬の大三角の一角が消える

▼野本さんが言うように、まさに「見たいような見たくないような」天空の劇である。



2013年9月14日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)

天声人語

▼ 八代目桂文楽の「寝床」は狂歌の引用で始まる。「まだ青い素人(しろと)浄瑠璃玄人(くろ)がって赤い顔して黄(き)な声を出す」。大店(おおだな)の旦 那が己の声のひどさも省みず、下手な義太夫を店子たちに語って聴かせようとして一騒動、という噺(はなし)である。音は時に大きなストレスをまき散らす

▼むろん癒やし系の音もある。帝京大医学部の新見正則(にいみまさのり)准教授(54)らは、音楽の面白い効果を実験で見つけた。その研究が、人々を笑わせ考えさせる業績に贈られる「イグ・ノーベル賞」医学賞を獲得した

▼マウスの腹に別のマウスの心臓を移植する。自分の心臓はそのまま動いている。移植した心臓の方は拒絶反応にあって、8日後には止まる。ところが、手術後にベルディのオペラ「椿姫」を聴かせ続けると、平均26・5日も動き続けたという

▼モーツァルトを聴かせてみると、これも平均20日ほど動いていた。ただのノイズでは影響がなかったというから、名曲の力だろう。美しい調べが拒絶反応を弱めた。つまり、体内に入った異物を攻撃する免疫の作用を弱めたということらしい

▼同僚記者が新見さんに聞いたところ、免疫細胞はいわば侵入者に目を光らせる警官だ。音楽によって警官の数自体は増えるのに、異物をあまり敵視しなくなる。なぜそうなるのかはまだわからないという

▼「病は気から」は本当かも、と思わせる結果だ。臨床に役立つと新見さんは期待している。あれこれ想像してみる。ジャズならばどうか。義太夫でも名人のなら効くだろうか。
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【2013/09/14 06:40 】 | 未選択 | 有り難いご意見(0)
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