9月20日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM) 立ち話の会議 社長が実際の仕事についてあ まり知らず、会議で「どうだ君、やれると思うのだがどうだ」というようなことを言っていると、甲論乙駁、議論百出となって、三日ぐらいもかかることになり かねません。それはいささか極端ですが、会議というものは概してそのような傾向が強いのではないでしょうか。それでは何かにつけてテンポの速い今日の世の 中では、結論が出たときにはもう状況が変わっているということにもなりかねません。 ですから会議だからといって、会議室に集まり椅子に座ってするというのではなく、言うなれば立ち話で会議をして即決するというくらいの心構えが必要だと思います。 筆洗 2013年9月19日筆洗(東京新聞TOKYOWeb) ▼熱するのはたやすいが、冷たく保つのは、難しい。カッカしやすい頭もそうだが、科学技術の歴史もまたそうらしい ▼熱することに関しては、人類には五十万年の火を使ってきた長い経験がある。金属を高温で溶かす技も六千年前には手に入れていた。だが、氷点下をぐっと下回る低温を操る技を手にし始めたのは、わずか二百年ほど前のことらしい ▼炭酸ガスを冷やしドライアイスにするのに成功したのは十九世紀半ば。ヘリウムガスを液体にするのはとりわけ難しく、一九〇八年にオランダのカメルリーン・オンネス博士が成し遂げた ▼博士は、ようやくたどり着いた零下二六〇度以下の世界で、とてつもない発見をする。水銀の電気抵抗が突然、ゼロになったのだ。人類が超電導現象を目にした最初の瞬間であった(伊達宗行著『極限の科学』講談社) ▼泉下のオンネス博士も、日本の鉄道技術者の挑戦には、目を細めるであろう。液体ヘリウムと超電導磁石を使うリニア中央新幹線が、二〇二七年に開業しようというのだ。きのうJR東海は路線の具体案を発表し、着工に向け一歩を踏み進めた ▼超電導の発見から一世紀、旧国鉄がリニアの開発を始めて半世紀。九兆円を投じてのリニア建設は、五十年先、百年先をにらんだ技術力の継承と発展をも狙ってのことという。リニアの先にも、ずっと線路は続くのだろう。 2013年9月20日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル) 天声人語 ▼ 速さに慣れる習性は恐ろしいと思う〉という感想が真に迫る。鉄道紀行作家の故宮脇俊三(みやわきしゅんぞう)さんが東京―新大阪間に「のぞみ」が登場した 時の試乗記を書いている。21年前だ。時速270キロに達した瞬間はスリルを感じたものの、たちまち〈それが当然のように思えてくる〉 ▼ 最高時速が505キロになっても、やはりすぐに慣れて、のぞみなぞはまだるっこしいと感じるようになるのだろうか。品川―名古屋を約40分で結ぶリニア中 央新幹線のルートや駅の場所などがわかってきた。14年後の開業をめざすが、7年後の東京五輪が決まり、せかす声が上がる ▼同じ鉄道の話題でも好対照なのが、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星」だろう。欧州のオリエント急行にも匹敵する高級な客室やサービスが売りだ。来月15日から走りだす。博多から由布院、阿蘇、長崎といった観光地を巡っていく ▼リニアは名古屋まで1万1500円を想定。ななつ星は3泊4日、2人1室で最高113万2千円。かたや、スピードが節約してくれる時間を買い、こなた、快適な空間とそこで過ごす時間を買う ▼移動の手段に徹する前者に、移動じたいを目的として楽しむ後者。ななつ星をデザインした水戸岡鋭治(みとおかえいじ)さんの言葉がおもしろい。「鉄道は遅い旅を追求したことが一度もない。これからはいかに遅く、ゆったり走るかだ」(「大人の鉄道入門」) ▼予定通りの開業なら生きてリニアに乗れるかどうか。豪華列車には乗ってみたいが、手が届かない。 PR |
|