【中田絢子、島康彦】天皇陛下は2014年の年頭にあたり、宮内庁を通じて感想を発表した。最初に東日本大震災の被災地に触れ、放射能汚染により以前住んでいた地域に戻れない人や、仮設住宅で厳しい冬を過ごす人ら被災者を「改めて深く案じられます」と思いやった。さらに「雪の深くなる季節、屋根の雪下ろしの事故には十分に気を付けてください」と呼びかけた。

 新しい年に向けては「苦しい人々の荷を少しでも分かち持つ気持ちを失わず、助け合い、励まし合っていくとともに、世界の人々とも相携え、平和を求め、良き未来を築くために力を尽くしていくよう願っています」と述べた。

 昨年1年間に詠んだ天皇陛下の短歌5首、皇后さまの3首も発表された。陛下の5首には、10月の熊本県訪問で面会した水俣病患者への思いを詠んだ歌があった。

 天皇、皇后両陛下は1日、新年祝賀の儀で安倍晋三首相や外国大使らから新年のお祝いを受ける。2日には一般参賀があり、皇族方とともに5回、宮殿のベランダに立つ。

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 宮内庁は、天皇陛下の歌5首と、皇后さまの3首を発表した。

▽天皇陛下

 〈あんずの里〉

 赤き萼(がく)の反りつつ咲ける白き花のあんず愛でつつ妹と歩みぬ

 〈大山(だいせん)ロイヤルホテルにて〉

 大山を果たてに望む窓近く体かはしつついはつばめ飛ぶ

 〈水俣を訪れて〉

 患ひの元知れずして病みをりし人らの苦しみいかばかりなりし

 〈皇居にて 二首〉

 年毎に東京の空暖かく紅葉(もみぢば)赤く暮れに残れり

 被災地の冬の暮らしはいかならむ陽(ひ)の暖かき東京にゐて

▽皇后さま

 〈打ち水

 花槐(はなゑんじゆ)花なき枝葉そよぎいで水打ちし庭に風立ち来たる

 〈遠野〉

 何処(いづこ)にか流れのあらむ尋(たづ)ね来し遠野静かに水の音する

 〈演奏会〉

 左手(ゆんで)なるピアノの音色(ねいろ)耳朶(じだ)にありて灯(ひ)ともしそめし町を帰りぬ