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【再生の設計図 震災半年に聞く】(3)生島ヒロシさん(60)
【再生の設計図 震災半年に聞く】
(3)生島ヒロシさん(60)
2011.9.7 07:49 (1/4ページ)
「残された人間が前向きに生きないと」(瀧誠四郎撮影)

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「残された人間が前向きに生きないと」(瀧誠四郎撮影)

フリーキャスター

「公共事業で東北を元気に」

 --生島さんの故郷、宮城県気仙沼市にお住まいの妹さんご夫婦が、震災で行方不明になってしまわれました

 「8月下旬、妹夫婦の家にあったアルバムが見つかったんです。一番下の弟の結婚式の写真なんですが、えっ、と思うくらいきれいに残っていて。妹夫婦と若かりし頃の僕、お袋やめいっ子、おいっ子も一緒。みんなで『これは奇跡だね』って言い合ったんです」

 --車や財布も見つかったそうですね

 「でも遺体はなかなか見つからない。僕の地元の友人の中には、お姉さんが津波にのまれる瞬間、『ありがとう』って言って手を振ったのを見た人もいます。先日、地元の復興コンサートに出てその話を聞き、胸が熱くなりました」

 --募金活動や復興くじのPRもされています

 「僕の事務所のある目黒区も協力してくださって、募金はもうすぐ1億円になります。妹夫婦を失った悲しみはありますが、避難所生活を続ける友人や仕事を失った知人がいる。だから普通の生活を営める僕らが故郷に恩返しをしなくては。(歌手の)和田アキ子さんの協力も得て毎月11日、被災者や震災孤児に支援活動を行っています。息の長い活動を続けるつもりです」

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「残された人間が前向きに生きないと」(瀧誠四郎撮影)

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「残された人間が前向きに生きないと」(瀧誠四郎撮影)

 --震災当日も仙台で講演の最中だったそうですが、実家は大丈夫でしたか

 「実家は海から150メートルくらいの距離ですが残っていました。でも妹の自宅は土台しか残っていなくて、まだ水につかったままです。いくら日常に戻りたくても、仕事や未来への展望がなければ難しい」

かけ声より仕事を

 --今後、東北には何が必要だと思いますか

 「仕事です。故郷に住み続けたくても、雇用がなければ離れざるを得ない。地元で『絆とか、頑張ろう東北っていうかけ声だけじゃ何も進まない。俺たちは現実の生活が大変なんだ。働く場を作ってほしい』という声を聞くんです。だから東北全体を経済特区にして税制優遇して企業を誘致したらいい。企業も海外に工場を出すくらいなら、今こそ東北に工場を作ってほしい。電力不足や人件費の高さが指摘されるけれど、たとえ給料が3割安くても、一人でも多くの雇用を東北に生み出せば、企業の社会的責任を果たすことになる。実現できるか分からないけれども、(電話で顧客対応業務を行う)コールセンターを作ろうという計画もあるんです。ああいう土地ですから穏やかで誠実な対応ができると思います」

 --雇用問題は切実です

 「避難所で自殺も増えている。経済問題と自殺は密接な関係があって、家族の面倒をみられないと中高年が死を選ぶケースは多い。雇用を生むには、国の安全対策のための公共事業が必要だと思う。今こそ無駄なものを作るのではなく、マグニチュード(M)9クラスの地震や津波が来てもバックアップできる、システムの構築と工事が必要です。災害リスクに対応する日本列島の強靱(きょうじん)化です」
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「残された人間が前向きに生きないと」(瀧誠四郎撮影)

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「残された人間が前向きに生きないと」(瀧誠四郎撮影)

残された者の責任

 --具体的には

 「今、首都圏や大阪、名古屋が東北と同じように被災したら、日本沈没です。野田新首相は増税のお考えが強いようですが、ここは戦後復興と同じと考え、80兆~100兆円規模の公共事業で、震災に負けない都市機能の強化をしたらいい。そういう事業は60年ほどで償還できると思う。その間にデフレ不況を脱却する。それで雇用も生まれるし、リスク対策、景気対策にもなる。さらに復興国債を買った人間には相続税を優遇するなど、未来に希望が持てる施策が必要だと思う。借金は増えるけれども、日本を21世紀に耐えられる国にする、大胆な発想でやってほしい」

 --これらは東北復興の未来像が見えないからこそ、出た発想ですか

 「そうです。気仙沼港周辺なんか手つかずで、夜は真っ暗です。仕事や財産がある人はいいですが、何もなくなった人は生きる希望すらない。家族がいるから悲しみを半分にできるのに、家族すら失って…」
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「残された人間が前向きに生きないと」(瀧誠四郎撮影)

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「残された人間が前向きに生きないと」(瀧誠四郎撮影)

 --そうした大きな施策だとまさに政治の出番ですが、その政治が不安定です

 「日本が変わるという具体的なメッセージを出してほしい。だから財政出動して、意味ある公共工事をすべきだとの考えに至りました。公共工事というと悪者扱いされ、事業仕分けでカットされましたが、日本の安全安心のためには十分ではないんです。これから首都圏に大地震がきたら、もっと大被害が出て、日本は今度こそ沈没してしまいます。僕は残された人間の責任として、提言と活動を続けます。そうでないと妹たちも納得できないと思う。『お兄ちゃん、頑張ってくれてる』って向こうで思ってほしいですから」

                   ◇

【プロフィル】生島ヒロシ

 いくしま・ひろし 昭和25年、宮城県気仙沼市生まれ。米カリフォルニア州立大卒。TBSのアナウンサーを経て平成元年に独立。ラジオ番組「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」などを担当。ファイナンシャルプランナーや防災士などの資格を持つ。

                   ◇

 ≪聞いてみて≫

 今月4日、遺体の見つかっていない妹さん夫妻の葬儀を行った。悲しみの時期に区切りを付け、避難所で暮らす友人を思い浮かべながら仕事を求める言葉が切実だ。故郷の人の思いを背負い、行動しようとする芯の強さを感じた。(飯塚友子)
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【2011/09/07 12:10 】 | 未選択 | 有り難いご意見(0)
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